トラネキサム酸のイオン導入
私にとって大変な季節がやってきました。花粉症の季節です。2月は抗アレルギー剤を飲んでいれば特に症状がなかったのですが、3月に入ったとたん、くしゃみ、鼻水は止まらず、私の鼻はあっという間に真っ赤っかのかさかさになってしまいました。早くこの時期が過ぎないかと、冬眠している熊のような心境です。
さて、先日のブログでお話した「トラネキサム酸の外用」についてお話させていただきます。トラネキサム酸については『化粧品のHAKU』 や『トランシーノ』といった製品により、シミ、肝斑などに効果があるとして広く知られるようになりました。皮膚科ではもともと肝斑に対する有用性が報告さ れ、治療薬として処方されてました。トラネキサム酸の薬理作用はさまざまあります。肝斑や日光黒子(老人性色素斑)などの色素性疾患に対する作用はまだ明 らかな見解はありませんが、プロスタグランジン(炎症)抑制作用、チロシナーゼ活性(メラニン生成)阻害作用により美白作用をあらわすものと考えられてい ます。
このような薬理作用があるトラネキサム酸を飲み薬ではなく、肌に直接導入する方法はないか?化粧品のように塗るだけでなく、より効果的に肌の内部に浸透させる方法はないか?ということで、当院ではイオン導入という方法を使っています。
イオン導入は、①電気反発により、マイナスに帯電している成分はマイナス極をかけることで、プラスに帯電している成分はプラス極をかけることで肌に浸透して いきます。②電気浸透流により、帯電していない成分はプラスからマイナスに流れる、というメカニズムで皮膚に有効成分を浸透させています。イオン導入でよく行われているVitCはマイナス極から導入しています。
では、トラネキサム酸は・・・・。トラネキサム酸は(株)資生堂研究所の研究で、pHにより、プラス、マイナスの両性の電解質であることがわかっています。よって、有効に皮膚内部に浸透させるために、適正な導入極、pHが必要になります。当院ではイオン導入をするにあたり、最も適正に調整されたトラネキサム酸のイオン導入剤(資生堂 NAVISION) を使用しております。その上こだわっているところは、イオン導入の際、顔全体にトラネキサム酸を浸透させたマスクをのせ、そのマスクも通電し、さらに施術 中スタッフが顔全体にローラーをかけております。これはなぜかというと、マスクに通電するのみでは均一に電流が流れないことがわかっているからです。製剤 の皮内濃度は電流量に比例するので、均一に電流を流すためにつきっきりでローラーをかけているわけです。
なんだかイオン導入の話にそれてしまいましたが、では実際当院ではどのような方にトラネキサム酸のイオン導入を治療として行なっているかというと、肌荒れ、肝斑、薄いしみ、炎症後の色素沈着、ニキビ後の赤み、赤ら顔、赤ぐすみのある方に勧めています。
ここで注目していただきたいのが“赤み”です。皆さんくすみというと、メラニンによる黒ぐすみ、黄ぐすみを想像すると思いますが、“赤み”、これも強すぎる と肌の明るさ、透明感がなく感じます。この“赤み”に対しトラネキサム酸の導入を行うと、“赤み”が改善し、肌の明るさ、透明感がでてきます。トラネキサ ム酸の抗炎症作用が働いているのではないかと思っています。
赤ぐすみなどでお悩みの方、是非、ご相談ください。