ワキ汗(腋窩多汗症)の治療:ボトックス®治療、エクロック®ゲル、塩化アルミニウム溶液外用
気温が上がり、汗をかく時期になってきました。
今回は脇汗、原発性腋窩多汗症(明らかな原因なく多量の汗がでて日常生活に支障をきたす状態)の治療についてお話させていただきます。
汗は体の体温調節など重要な役割を担っていますが、汗はあせも(汗疹)、汗疱性湿疹(異汗性湿疹)など、肌にかゆみを伴う赤み、水疱、丘疹(赤いぷつぷつ)を起こします。多汗症の症状が現れやすいのは、汗腺が多い手のひら、足の裏、額、ワキの下で、緊張やストレスなどの精神的な刺激も発汗の原因となります。ワキの下は服の汗ジミが目立つ事で人目がきになり、仕事や学業に集中できなかったり、汗ジミで服の色が限られたりなど日常生活に支障をきたします。
脇汗の治療には以下のような治療があります。
1 塗り薬(外用薬):塩化アルミニウム溶液、エクロック®ゲル5%
2 注射薬(ボツリヌス療法):ボトックス®治療
3 飲み薬(内服薬):抗コリン薬、漢方薬
4 手術 :神経を切断する手術、汗腺を除去する手術
5 その他 :レーザー療法、精神(心理)療法など
当クリニックで行っているのは、1.塗り薬(外用薬):塩化アルミニウム溶液、エクロック®ゲル5%と2.注射薬(ボツリヌス療法):ボトックス®治療です。
その中でエクロック®ゲル5%とボトックス®治療については、原発性腋窩多汗症の重度の方(多汗症疾患重症度評価尺度Hyperhidrosis Disease Severity Scale (HDSS)で評価)が保険診療での対象となります。
塩化アルミニウム溶液は汗の出口を塞ぐ事で発汗を抑えます。1日2回、ワキに外用します。いきなり多量に塗ると赤みやかゆみがでることがありますので、少しずつ塗る量を増やしたり、それでも刺激が出る場合は、外用回数を1回に減らします。外用液は病院が自己調剤するか、薬局で調合し処方しています。塩化アルミニウム溶液はワキ以外の部位の多汗症(例:手足の多汗症)にも使用します。
エクロック®ゲル5%は汗を出す指令をブロックすることで発汗を抑えます。1日1回、ワキに使用します。アセチルコリンの作用を阻害する抗コリン剤に分類されるので、薬液は専用のアプリケーターに乗せてそれで脇に塗ります。光をまぶしく感じる、口の渇きなどが出る場合があるので、薬液が手についたときは顔を触らず、すぐに洗い流してください。エクロック®ゲル5%は1本20gが14日分に相当します。新薬の為、現在は1回の受診で1本分の処方になりますが、2021年12月からは市販後1年となりますので、数本処方が可能となります。エクロック®ゲル5%は保険適応が原発性腋窩多汗症のみとなっておりますので、他の部位への適応での処方ができません。ただ、汗は最初に記載したように、あせも(汗疹)、汗疱性湿疹(異汗性湿疹)など、肌にかゆみを伴う赤み、水疱、丘疹(赤いぷつぷつ)を起こしますので、塩化アルミニウム溶液のように、他の多汗症の部位にも適応ができることを期待します。
ボツリヌス療法(ボトックス®治療)はボツリヌス菌がつくる天然のたんぱく質から精製された薬をワキに直接注射することで、交感神経から汗腺への刺激の伝達をブロックし、発汗を抑えます。効果の程度や持続期間は個人差がありますが、4~9か月間です。片側のワキあたりにボトックス®50単位を15~20か所に分けて注射をし、治療は数分で終わります。当院では注射の痛みを軽減するため、ご希望の方には局所麻酔を行います。局所麻酔を塗って約40~60分お待ちいただいてから治療となります。痛みは個人差があり、当院で局所麻酔をしないでボトックス®治療を行う方も3割程度いらっしゃいます。重度の腋窩多汗症と診断された方のみ保険診療で対応でき、その場合、3割負担の方の窓口負担は約23000円前後(当院では局所麻酔の料金はいただいておりません)になります。ワキ汗にかなり悩んでいた患者さんがこの治療を受けられると本当に楽になったと喜ばれ、こちらも嬉しくなります。
今年の夏も猛暑という予想がでています。ワキ汗の治療も色々ありますので、お悩みの方はご参考にしていただき、皮膚科にご相談ください!